『科学の目 科学のこころ』を読む
著者は生物学者。
文系の学生に、〝科学とは何か〟を教えるのが仕事。
その職に就いて以来、
科学を外からながめること
科学と社会のとの関係を考えること
が、多くなったと。
本書について、著者は、
「科学という人間の営みに関して思うこと、考えることを、書きつづった」
と書く。
とは言っても、しゃちほこばった内容はない。
寝転がってでも読み進められるエッセー集。
こんな飯屋で読み始め。
明治になって、hydrogen や carbon という言葉が入ってきた時、それを
hydrogen を 水素(すいそ)とする案と みずね(水根) とする案
carbon を 炭素(たんそ)とする案と すみね(炭根) とする案
があったそう。
結局、大和言葉の〝みずね〟ではなく 漢語の〝水素〟が採用されたように、学術用語の多くは漢語で表現される。
そんなこともあって、科学洋書の翻訳には、とんでもない間違いがあるという。
本書であげている例では、〝放射性の:radioactive〟。
〝hot〟にも 同じ意味があって、それを知らないで〝できたてほやほやの〟と翻訳された文献があるのだと。
本夕、読了。
狭い業界でしか通用しない用語があって、用語集を配布している企業も多い。
例えば、
〝伝播:でんぱ〟。
業界・学界によっては〝でんぱん〟と読まないと笑われる。
〝腹腔・口腔:ふっこう・こうこう〟。
業界・学界によっては〝ふっくう・こうくう〟と読まないと笑われる。
〝抵抗値 Ω:オーム〟。
キロオームの千倍をメガオームと言うと笑われる。
メグオーム。
〝ステンレススチールのJIS記号:SUS〟。
エスユーエスと読むと笑われる。
サス。
学術用語を、和英・英和で羅列した『学術用語集』が、文部省(現文科省)の音頭とりで編集され、出版されている。
冊子を全部集めると50センチくらいになる。
それだけの厚みがあるのに、用語が並んでいるだけで、その意味は書かれていない。
意味を書くと、厚さ10メートルでも足りないだろう。
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