『写真で読む 山の名著』を読む
山の雑誌数々あれど、『山と渓谷(山と渓谷社)』と『岳人(ネイチュアエンタープライズ)』の2誌の質の高さを評価する人が多い。
この2誌とも刊行歴は他誌よりはるかに長く、順に90年に70年。
このうち、山と渓谷社は、絶版などで入手しにくい本の復刻版や、資料や翻訳を精査しての改訂版をヤマケイ文庫のレーベルで出版する事業を行っている。
ヤマケイ文庫の立ち上げから10年になり、その10年で100点近い数が刊行されている。
拙ブログで、以前に記事にした、
・もう道に迷わない
・山岳遭難の教訓
・山の突然死
・アルピニズムと死 僕が登り続けてこられた理由
・山人たちの賦
・山釣り
・マタギ
・旅に出る日
の8冊は、ヤマケイ文庫。
こんな喫茶店で読み始め。
本書は、本の本。
ヤマケイ文庫から〝名著〟として選ばれた17冊が、17冊それぞれに数葉の写真とトータルで230ページを使って解説される。
さらに33冊が各々1ページで紹介される。
合計で50冊なので、ヤマケイ文庫既刊の半分以上が本書に登場することとなる。
ところが、この50冊と、私の読んだ上記8冊とが1冊も かぶらない。
私の読書の対象が ひどく偏っているせいだろう(^^;
どういうわけか、これが悪くない気分(^o^)
私のやっている山歩きは、ただのウォーキング。
6時間から9時間を費やしても、獲得できる累積標高は2000メートルくらい。
背負うザックも、最も重いときで17キロ。
山によってはロープやクサリを使うような斜面を登ることもあるけれど、使うのは誰かが張ってくれた固定ロープや固定クサリ。
しかし、本書で解説される〝名著〟の中には、私のような山歩きが書かれたものもある(^o^)
困難を克服する山行の〝名著〟も
山行の孤独が記された〝名著〟も
吹雪かれてのビバークで死を待つ間に書かれた〝名著〟も
死の淵からの生還が書かれた〝名著〟も・・・
本夕、読了。
タイトルに〝写真で読む〟とある。
その通りで、挿入されているのは、〝名著〟を語るに申し分ない写真ばかり。
遺品のピッケル
雪の斜面に足跡を残すソロ登山者の後ろ姿
頂に続く鋭い稜線
夕日に染まる垂直の岩壁
ガスで白い沢
山小屋のランプ
悲しくて孤独で厳しくて、そして美しい写真だ。
ところで、山岳写真家という職業はあるが、釣り写真家という職業はない。
この件について私なりの見解があるのだが、素晴らしい写真と一緒に、悲しくて孤独で厳しくて、そして美しい文章を読んだあとだ。
私の愚見を語るのはやめて、しばし、本書の読後の余韻に浸っていようと思う。
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