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2016年3月 8日 (火)

『カレーライスと日本人』を読む

本書の終わり近く、
〝何でもカレー粉を入れればカレーになってしまうが、カレーに何を入れてもカレーのままである。〟
とある。

沖縄県石垣市内の食堂で『ラーメン』を注文すると、『日清カップヌードル』をどんぶりに移しただけのものが出される。
ホントの話。

ホントにそうだった頃の、石垣島より もう少し西の西表島での話。
同島大原の船着き場近くの売り場面積が2坪もない よろず屋が、西表島全島唯一の商店。

売り場面積が2坪もない よろず屋。
そこには、ノート・洗剤・電球・タマネギ・ニンジンは置いてあるが、生肉・生魚は置いていなかった。
牛・豚・鳥・魚を問わず、生肉を買い求めるということができないのが西表島だった。
この島で肉といえば、ハーフガロン(約2リットル)缶に詰められた米国メイドの塊肉のコンビーフがそれ。

西表島唯一の商店に、生肉は置いてなかったが、しかし、キッコーマン醤油、ブルドックウスターソース、カゴメケチャップ、キューピーマヨネーズ、そしてエスビーの赤缶のカレー粉は置いてあった。

島には専業のホテルや旅館はなく、民宿が数軒。
私が泊ったある民宿の、ある日の夕食はカレーライス。
その民宿のカレーは、溶いた小麦粉にカレー粉で色を付け、タマネギ・ニンジン、そしてコンビーフ。
確かに、〝何でもカレー粉を入れればカレーになってしまうが、カレーに何を入れてもカレーのままである。〟は至言である。



Curry_and_riceこんな喫茶店で読み始め。

本書内の記述によれば、著者は〝旅行して回ることが商売〟だというカメラマンでジャーナリスト。
調べてみると、食文化研究者という肩書も持っている。
文化人類学を修めた人なので、本書もそうだが、食文化研究のレベルは大変に高度。

マレーシアで食べたカレーが甘かったという話から進んで、〝カレーの定義〟や〝カレーのルーツ〟の調査。
そして、カレーが日本の国民食となる歴史の調査と考察。

以下、カレー、カレーライスという語は、日本でいうところのカレー、日本料理としてのカレーライスを指すものとする。

日本で文字として残っているカレーのレシピの最初は、1872(明治5)年発行の料理書。

インドを植民していた英国のC&B社製のカレー粉が、開国間もない日本に入っている。(注1)

著者は、歴史をさかのぼるために、国立国会図書館に行く。
英国のC&B社へ行く。
大英図書館へも行く。
大英図書館付属のインド専門図書館にも行く。
インドへも行く。(注2)
もちろん、日本で最初に紹介されたカレーのレシピに従って調理も試みる。(注3)

我々日本人が、タマネギ・ニンジン・ジャガイモの入ったカレーを食べるのは、大正期になってから。
なぜなら、これらが国内で栽培されて流通に乗るのは、明治もかなりたってからで、それまでのレシピはタマネギではなく長ネギ。
大正期になると、軍隊食にタマネギ・ニンジン・ジャガイモを使ったカレーが見え、以降、家庭でもタマネギ・ニンジン・ジャガイモが使われだす。(注4)

著者の考察をまとめると、以下のごとし。

文明開化後、洋食が入ってくると同時に、日本食は高度な技術を要する板前料理と家庭料理とに二極化した。
カレーは洋食。
何でもカレーを入れればカレーになるが、カレーに何を入れてもカレーのままである。
だから、カレーは増殖することができた。
カレーは日本人の主食の米とともに食べる。
その上、インスタントカレールウの流通により簡単に作れる。
家庭料理となる条件がそろっている、ということで国民食となったのではないか、と。

日本人は、月に4回 カレーライスを食べているという統計があるそうだ。

カレーライスは家庭でもそれなりのものが作れるので、外食産業化は難しい、と言われていた。
長いこと、そして今も喫茶店のお手軽メニュー、学食・社食の最速提供メニュー、献立を考えるのに疲れたおかあさんの骨休め料理といった位置付けだろう。

CoCo壱番屋が、カレーだけで成功させた経営手腕は大したものだと思う。

本夕、読了。

(注1)
C&B社は300年以上も続く伝統ある会社。
ピクルスやサラダオイル、ビン詰め肉など保存食品が主力製品。
今も変わらぬ調合でカレー粉を出荷しているが、現在、製造自体は外部委託とのこと。

(注2)
インドでは、インド人に〝インド人もビックリ〟の『ハウス印度カレー』を食べてもらうようなことを行っている。
インド人は、『ハウス印度カレー』を彼らの味覚でもカレーだと認めるそうだ。
そして、ウマイとも。

(注3)
明治の初頭から、ウシ・ヒツジ・ブタ・トリ・ウサギ・エビ・貝などを使うレシピが紹介されているが、文字として残っている一番最初はカエル。
著者は、だからカエル肉とC&B社のカレー粉を使い、往時のレシピをなぞる。

(注4)

インド・英国ではカレーにリンゴ、レモンをよく使う。
明治のレシピにも、リンゴ・レモン(代替品としてユズ)が書かれている。
また、砂糖も使う。
昭和の初期には早くも日本でインスタントカレールウが作られているが、広く家庭に行きわたった商品は'63(昭和38)年発売の『ハウスバーモントカレー』。
〝リンゴと蜂蜜 とろーりとけてる〟は、カレーの王道といえるかもしれない。

なお、インド・英国では、カレーにニンジン・ジャガイモを入れない。
特に、カレーにジャガイモを入れるのは、極めて日本的調理法。
『エスビーゴールデンカレー』のCMソングが、〝ジャガイモは入れないほうがおいしいのヨ〟だったのは、まさにそういう意味で王道路線を狙っていたのかもしれない。
但し、これにはジャガイモ生産者からクレームが付き、ほどなくこのCMソングは流されなくなった。

現在売られている『エスビーゴールデンカレー』の箱裏のレシピには、タマネギ・ニンジンの次にジャガイモが記載されている。
これは、私自身がスーパーアークス中島店の商品棚で確認済み(^o^)

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