『「数」の日本史』を読む
日経ビジネス人文庫。(注)
「われわれは数とどう付き合ってきたか 」が副題。
和漢の古典書に広く通じた筆者が、「数」に光を当てて書いた日本史。
前書きに「悪戦苦闘して書きあげた」とある。
取り上げられている話題への調査の範囲は大変に広く、裏付けが詳細で誠実。
私のような者にも、悪戦苦闘さが十分に伝わってくる。
また、「現在の中学生が理解し得る数学までの範囲を越えない」とあり、取り上げられている「数(学)」のレベルは確かに中学まで。
しかし、これがなかなか思ったようには(^^;
読み通すのに結構な時間を使った。
浅学ゆえに知らなかったのだが、著者は国際的にも名を知られている物理学者だとのこと。
文章は端正だが、難しい言葉づかいはない。
そして、本書内のいたるところで、頭の使い方の豊かさ・深さを感じさせる。
話のスタートは縄文時代。
日本語の成立の歴史を「数」を視点にさぐってゆく話から。
大陸より伝わった数(算)学は、田畑の面積とそこから決まる租(上納物)量と役人の給料計算に用いるくらいのレベル。
しかも、その数(算)学を使う人が世襲化していく。
中国や日本では計算器具としてのそろばんが工夫されたのが特筆されるぐらいで、インド以西(アラビア・エジプト・ギリシャ・イタリア)のような数理文化は発達しなかったようだ。
江戸中期、ニュートンと同時代、高度に発達した和算についてページが多く割かれる。
そして、ここを読み進めるのに時間が掛かった。
ところで、円の面積の算出法(積分を使わないで)をいつ どのように教わったのか全く覚えていなかった・・・
円の面積は、半径×半径×円周率。
あるいは、直径×直径×円周率÷4。
このサイトで思い出した。(小学5年で習う単元のようだ)
円周が布テープでつながった、オレンジを輪切りにしたような切れ目の入った木でできた円盤、あァ、あれだァ(^o^)
日本では、かなりの長期間に亘って円周率を3.16とし、それを4で割った小数点以下の数字79を多用していたという。
実業での測定作業においては、半径より直径か円周の方が得やすい。
多分、円の面積を出すには後者の式を使うことが多かったのだろう。
(注)
本書は、’02年に日本経新聞出版社から単行本として出版されていたものを'07年に文庫本としたもの。
その際に、歴史的でない部分(現在について書かれた部分)を割愛して本をスリム化したとのこと。
購入した本の奥付の記載は、'07年発行の第1刷。
長いこと、買い手が付かないまま書店の書架に並んでいた本ということになる。
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