『黒部の太陽』を観る
シケ模様(^^;
Wikipediaの「黒部の太陽」より、
-引用開始-
裕次郎自身が「こういった作品は映画館の大迫力の画面・音声で見て欲しい」と言い残したという理由から、長年ビデオソフト化されていなかった
-引用終了-
のだが、この3月にDVD・BD化された。
ンで、我が家の「迫力に乏しい画面・音声」で(^^;
〝こういった〟と形容するほどに〝こういった〟作品なのかどうか。
それをああこう書けるほどの鑑賞眼を私は持っていない(^^;
さて。
電気料金は国の査定で定まるのだが、発送電を行うのは官公庁ではない。
株式会社。
よって、事業を進めるにあたって必要となる購入・工事の発注方法に制限はない。(官公庁の発注とは違う)
黒部ダム建設に当たって、関電は入札制をとらず、5つの工区それぞれに1社特命・指値(さしね)(注1)で発注したようだ。
ダム・発電所建設資材搬送用のトンネル工事を、熊谷組が関西電力(関電)から受注する。
この工区内に破砕帯が存在することを、関電や熊谷組が知っていたのかどうか。(注2)
出水、坑道崩落。
『手を尽くすだけ尽くし、その上で・・・』のセリフを、シーンを変えて裕次郎に2回言わせる。
技術とか技能の映し込みに時間をかけていては、『黒部の太陽』にならない(^^;
熱意とか魂とか執念とかを演出したいのだろう。
しかし、『手を尽くすだけ尽くし』て、まだ『その上』があるのなら、『手を尽くすだけ尽くし』ていないのではないか(^^;
まァ、そこンところは・・・
最終的には、シールド工法(注3)や地盤固めの薬液注入(注4)を行うことで掘り抜き完了。
長さ83mの破砕帯の掘削に7ヶ月。
関電社長出席のもとでの対策会議。
関電社長が受注者幹部らに、
「金で解決するのであれば、問題は簡単じゃないですか」
「計画なんて悠長なことは言っておられませんよ。すぐやりなさい」
「金はいくらでも出します」(注5)
(注1)
官公庁発注の随意契約に相当するのが、「特命」契約。
「指値」は、発注者側が受注者に求める契約価格。
「いくらなら買うンだ」
「○△円」 ←これが指値
で、
「そんな額じゃァ、売れねェ」
とは、なかなか言えない(^^;
(注2)
施工前に地中内の調査をどの程度までできたのか知らないが、現場調査自体は相当以前から行われていたらしい。
映画の中では、工事着工前に「破砕帯」の存在を言って それを問題視するのは裕次郎だけという設定。
演出上の設定だろう(^^;
(注3)
映画の中では、シールド工法は新鋭技術であると強調される。
しかし、例えば、戦前に竣工していた関門海底トンネルはシールド工法で掘削されていた(映画の中では三船敏郎がそれを言っている)し、シールドマシンも戦前から国産品を調達できた。
熊谷組は、そのシールド工法を国内で最初に現場適用した会社でもある。
(注4)
地盤固めの薬液注入とはナレーションの表現。
セメントミルクのことだろう。
(注5)
会議後、工事会社幹部たちを別席に招待した場。
関電社長が正座して、手をついて熊谷組専務に頭を下げる。
「突貫工事でお願いします」
以下、私見。
指値契約とは言っても、受けた仕事。
この工事は大工事ではあったけれど、新規技術を必要としたわけではなかった。
工期遅延・トラブル対処に、技術のあと出し・出し惜しみは情けない。
「金はいくらでも出します」
しかし、多分、関電は熊谷組に追加費用を払わなかったのではないかと(^^;
関電社長役の滝沢修のメガネの向こうの眼が見事。
「特命」・「指値」発注ではあるが、電力会社のみでダム・発電所建設工事仕様をまとめられるわけがない。
特命(発注)先として腹づもりしている業者と工法の検討を行い、参考見積りも取っただろう。
コスト(工法・工期)検討にあたって、シールド工法もテーブルにのっていたに違いない。
シールド工法ではコストが引き合わない。
結果、人工(にんく)は要しても、低コストの削岩・発破掘進工法で工期内にトンネルを掘れるとはじいたのだろう。
労働力も人命も安かった。
24時間3交代工事、全工期7年。
その間の殉職者、171人。
蛇足。
ビールを飲むカットがあって、三船敏郎も映る。
ビールのラベルは見えないのだが、冷えが足りないようでグラスにそそぐと泡だらけ。
『男は黙ってサッポロビール』のCMが流れるのは、この映画の封切り後 かなり経ってから。
ウイスキーが何カットか映る。
角瓶とオールド。
この瓶に演技をさせている。
ラベルがカメラ目線(^o^)
長い話だった。
この映画も長い。
2部構成で3時間16分。
明日もシケ。
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