未成線を行く
小型船舶操縦士2級(旧3、4級)免許の航行区域は、海岸から5海里(約9.3km)以内。
海峡だと、その中心線から5海里以内に岸があれば、すなわち幅が10海里(約18.5km)以内ならば2級免許で渡れることになる。
渡島(亀田)半島南東の戸井町(注1)の汐首と本州下北半島最北の大間崎間は津軽海峡最狭部で17.5km(約9.4海里)。
従って、発着を汐首・大間崎とする航路を取れば、2級免許でも津軽海峡を渡ることができる。
海峡が狭いということは軍事の要諦でもあるということ。
ここに監視所や砲台を設けようというのは自然な発想だろう。(現に、対岸の大間には明治の時代から旧海軍防衛所があった)
汐首岬の要塞化(注2)のために’37年(昭和12年)から建設を始めたのが戸井線(注3)なのだが、29.2km中の9割26km強の軌道床ができ上がった時点で建設を中断している。
理由は資材不足。
’43年(昭和18年)のことで、すでに日本にはレール製造に回すだけの鉄材がなかった。(注4)
軌道床上にはたった1mのレールも敷かれることなく、以降、荒れるにまかせるのみ。
戸井線は未成線である。
その戸井線を家内と。
【画像:上】
恵山岬灯台。
戸井線に会うには、森町で国道5号から278号に乗り換え恵山岬を回らなければならない。
KON-chan号の経済速度で巡航1時間半でこの灯台を見るが、陸上から見るのは初めて。
この灯台を見る海域はマダラの好釣場。
【画像:中】
未成の戸井線の連続アーチ橋。
右端に見えるのは汐首岬灯台。
戸井-大間は青函トンネル建設の最有力ルートであったので、戸井線建設再開もあり得た。
だが、技術的理由によって青函トンネルルート候補から、戸井-大間は外された。
【画像:下】
未成線を背中にすると、汐首の海岸。
(注1)
'04年(平成16年)、戸井町は、恵山町・椴法華(とどほっけ)町・南茅部町とともに函館市に編入されている。
(注2)
船舶の空襲被害を防ぐため、青森-函館航路の航海時間を短縮することも大きな目的だった。
青森-函館だと航海距離は約60海里、それが戸井-大間だと10海里。
(注3)
函館本線五稜郭駅(函館駅をひとつ下った駅)から分岐し、8駅の新設が計画された。
(注4)
汐首の対岸でも、むつ市から大間までを結ぶ大間線の建設が進められたが、やはり’43年、資材不足を理由に建設が中断、戸井線同様、結局、未成線となった。
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コメント
おはようございます
僕もこのあたりを通ったことがあります。風化が進んでいるのにすぐ下に民家が建ってて危なく感じました。崖に張り付いているような路線ですからね。函館を挟んで反対側の松前線と雰囲気が全然違います。
4年前、江差線に乗って奥尻島に渡ったことがあります。
投稿: 釣り鉄 | 2010年5月 8日 (土) 08:17
ソウハチ好釣にコメントを書くつもりがこちらに書いてしまい、ソウハチ釣りのことには触れないで終わってしまいました。3日に僕たちもたぶん同じ場所だと思いますが行ってます。
その日はひとり3,40匹くらいしか釣れませんでした。
投稿: 釣り鉄 | 2010年5月 8日 (土) 15:32
釣り鉄さん、こんにちは。
鉄の話。
確かに危ない。
記事中には、“軌道床上にはたった1mのレールも敷かれることなく、以降、荒れるにまかせるのみ。”と書きましたが、一部、最近モルタルで崩落防止処置を行ってます。
過去をたどる縁(よすが)なのは通りすがりの者にとってのみのことで、住んでいる人にとってはただのモノに過ぎません。
鉄骨製ならば解体撤去もできそうですが、ああいう作りでは、今となっては解体撤去は大ごと。
危険箇所をコンクリートで固めていくべきでしょう。
記事にはしませんでしたが、翌日は松前線跡をたどりながら西に下りました。
おっしゃるとおり、戸井線とはすっかり雰囲気が変わりますが、鉄ヲタクにとってはこちらも絶景が続きますね。
奥尻島には私も渡ったことがあります。
地震の前のことでした。
釣りの話。
30枚もソウハチを釣れば十分だと私は思いますが(^o^)
ソウハチの産卵着底はもうじきです。
浮きソウハチはそろそろ終わりでしょう。
投稿: KON-chan | 2010年5月 8日 (土) 20:08