2023年12月 3日 (日)

『同調圧力』を読む

〝同調圧力〟
私の解釈では以下。
 気にそぐわない考え方や言動をする少数者を、
 多数者側の考え方や言動に合わせようとする
 雰囲気

〝同調圧力〟を感じた際に、〝同調〟しようとする者の気分は、
 長いモノには巻かれろ
 群集心理
 右へならえ

〝同調圧力〟を感じた際に、〝同調〟しまいとする者の気分は、
 負けるモノか
 屈するモノか
 正義は我にあり
本書は、〝負けるモノか〟・〝屈するモノか〟・〝正義は我にあり〟という立場のヒトが書いたもの。

〝同調圧力〟への抵抗。
それは時に、自身を英雄視し、はたからはユニーク・他人(ヒト)と違う・信念がある・個性的といった評価を得ることもある。
また それは時に、ひとりよがり・ピエロ・エキセントリック・頑固・偏屈といった評価を与えられることもある。

Photo_20231203000401
こんな飯屋で読み始め。
この季節、私の読む本の しおり はミズナラの落葉。

著者は3人。
 望月衣塑子(もちづき いそこ:東京新聞記者)
 前川喜平(まえかわ きへい:元 文科省事務次官
 マーティン・ファクラー(米国人ジャーナリスト:マルチリンガル者
                                       中国語と日本語は完璧)

望月・前川は、〝同調圧力〟を自身に実際に感じた・感じている例をあげる。
彼らの言う〝同調圧力〟とは、〝国家権力〟。
〝権力〟対〝個人〟
〝権力〟対〝ジャーナリズム〟
を書く。
まァ、しかし、私ごときが言っては ナンだが、本書に限っては という前提付きで、お二人の
 被害者意識
 自意識過剰
が、鼻につく。

本夕、読了。

今年の世界180ヶ国の報道の自由度ランキングは、
  1位 ノルウェー 
  2位 アイルランド
  3位 デンマーク
   ・・・
   45位 米国
   ・・・
   68位 日本
   ・・・
 178位 ベトナム
 179位 中国
 180位 北朝鮮

報道の自由と言論の自由はリンクしていると言っていいだろう。
そして いずれの自由も、〝理性〟のコントロールがあってしかるべきだろう。
それを〝同調〟とは言わないと思う。

巻末に三人による座談が載せられている。
マーティン・ファクラーのキレが見事。

| コメント (2)

2023年12月 2日 (土)

絵鞆マリン俱楽部 総会・納会

日本で新型コロナウイルスの感染流行が確認されたのは、'20年の初め。
よって、絵鞆マリン俱楽部の総会は'19年を最後に、'20年・'21年・'22年と書面によって。
総会直後に行っていた宿泊納会も、同期間は休会。

この年末は、久しぶりの4年ぶりに顔を合わせての総会・納会。
総会では、
 ・マリン倶楽部と無線クラブを統合
 ・釣りダービー登録方法
 ・釣り情報発信の場
 ・新会員の獲得
などを考えたいとの方針が執行部から提案され、異論なく承認。

231202
で、納会では年間釣りダービー入賞者の発表と表彰をサカナに、飲んで・食って・話して・聞いて。
事情があって、広い宴会場を確保できず、席の移動がままならない。
皆さんに お酌をして回れなかった ご無礼ご容赦のほど。

また、集合写真を撮れなかったことが残念。
今日の この会に集まったメンバーの年齢にもなれば、次の総会・納会までは アッという間。
今度の納会後には、K事務局長兼カメラマンに是非 集合写真を撮ってもらいましょう。

ちなみに、上の画像の背中側にもメンバー多数。
楽しいひとときでした。
ありがとうございました。

| コメント (6)

2023年11月26日 (日)

『海を渡った「ナパーム弾の少女」』を読む

1973年の「ニュース速報部門」のピューリッツァー賞は、〝The Terror of War(戦争の恐怖)〟。
ここでいう〝War〟とは、ベトナム戦争。
写されたのは、’72年6月。

Photo_20231125212202
       ―― The Terror of War ――

〝The Terror of War〟 に写る裸の少女が〝Napalm Girl〟、すなわち「ナパーム弾の少女」。
’75年4月に、この写真が撮られた場所から北東へ40キロにある南ベトナム首都のサイゴンが陥落し、ベトナム戦争が終わる 。

後遺症をともなう重度のヤケドを背中と左腕に負って火煙から逃れる この時の少女は、9歳。 
南ベトナム軍による南ベトナム集落への、ナパーム弾(焼夷弾)の誤爆によって起きた事件だった。

Photo_20231125212201
こんな喫茶店で読み始め。

資本主義(南) 対 社会主義(北)の 米ソ代理戦争。
北が南を押し切り、南・北ベトナムはベトナム社会主義共和国として統一され現在に至る。

のち、優秀だった少女は医学生となるが、その優秀さゆえ、社会主義政府によって反米・反帝の広告塔とされることになる。
 ・社会主義国のキューバへの留学
 ・同じくキューバに留学していたベトナム人と結婚
 ・夫婦してのモスクワ旅行からキューバへの帰途、
  乗り継ぎ地のカナダ最東部のガンダー国際空港で
  難民申請

本夕、読了。

このヒト、よくよく考えている。
〝亡命〟ではなく、〝難民〟としての立場で行動したのも考えた末。
カナダの市民権を得、キリスト教に改宗。

ベトナムの両親をカナダに呼び寄せることもでき、自身、ベトナムを訪問できる自由も得た。

火傷痕の治療は長いこと続き、昨年完治。
治療にあたったのは米国人皮膚科医で、治療期間5年。

| コメント (0)

2023年11月25日 (土)

『食欲の科学』を読む

日がすっかり傾いた頃、ブラブラと流し歩きの飲食店街。
焼き肉屋・天プラ屋・ウナギ屋・焼き鳥屋などの換気扇から吐き出される匂いはたまらない。
大して腹は減っていないのだが。
食っていくかァ・・・

ところで、鼻腔の後ろ、つまり口の奥のノドのほうから入ってくる匂いを感じることができる生物は ただひとつ、ヒト。
ヒトだけが、空中に ただよう匂いだけではなく、口に入った食べ物の匂いも感じることができるンだと。

Photo_20231125084801
こんな飯屋で読み始め。

ヒトは〝飢え〟を克服した。
で、現代人は、空腹を満たすために食う では終わらずに、ウマい・マズい・好き・嫌いを言い、時に過食・時に拒食する生物となった。
4、50年前までの〝食欲〟とは、心理学的・行動学的研究対象。
今のそれは、〝脳〟の問題。
〝脳〟が〝食欲〟を生み出し、〝空腹〟を感じさせている。

本夕、読了。

著者は、睡眠・摂食行動などの仕組みを解き明かそうとする医学者。
プロオピオメラノコルチンとかニューロペプチドYとかという用語が40も50も出てくる。
そしてそれらの物質が、どういう理屈で人体に作用しているのかを、素人に分かるようには説明してくれない。
素人に分かるように説明できるような理屈ではないのだろう。
と、いうことで、ンなところは読み飛ばし(^^;

本書、第5章の章題は「視床下部から行動へ」。
その第5章は、19世紀のフランスのロマン主義作家の言葉、
 恋は空腹で生き、満腹になって死ぬ
で始まる。
大いに同感(^^;

| コメント (0)

2023年11月24日 (金)

『ウイルスとは何か』を読む

ポツンと何か。
そこから枝分かれして、さらに枝分かれして、・・・
と、今の生物界に至るまでの進化を〝樹木の形〟で表現する系統樹。
DNAの配列から系統樹を考える。
著者は物理を学んだ後、統計学を有効に使うことで系統樹を定める方法を研究したヒト。

と、書いた私自身が、何を書いているのか・・・
ハテ(^^;

Photo_20231112185601
こんな喫茶店で読み始め。

ウイルスは、自分自身だけでは増殖(複製)できない。
生物の細胞内に自分の遺伝情報を侵入させることで増える。
なので、細菌・動物・植物を問わず あらゆる生物のゲノムに、多くのウイルスの配列が組み込まれている。
本書には、こう書かれている。

 何千万年も前の我々の祖先もウイルスに感染した。
 それらの中には重篤な病気を引き起こしたものも
 あったかもしれない。
 そのウイルスの一部が我々のゲノムの中に残って
 いるのである。
 「ウイルスの化石」である。

本夕、読了。

本書、私程度の者には読みこなせない(^^;
それでも、用語を調べ調べしながら 何とか最終ページまでたどり着いた。

分かったフリは最低。
分かったツモリは、いくらか罪が小さいように思うが、しかし、これも大いに危険。

本書を読んでも、分かったフリもできず 分かったツモリにもならない私は、タダのバカ(^^;

| コメント (0)

2023年11月19日 (日)

『地平の月はなぜ大きいか』を読む

太陽と月の視直径は ほとんど同じで2分の1度。
30分。

360度さえぎるモノが ない砂漠や大洋。
地(水)平線に、太陽なり月なりをギッシリ並べたら720個。

Photo_20231119091601
こんな飯屋で読み始め。

イタンキ浜に立って見る、水平線から昇る太陽。
大きい。
イタンキ浜に立って見る、水平線から昇る月。
大きい。

大きく見えるが、しかし、そう見えているだけ。
大きくはない。
高いところにある太陽も月も、低いところにある太陽も月も、視直径は変わらずに2分の1度、30分。

大きく見えているだけであることの直接的証明は簡単。
昇ったばかりで大きく見える月と、その何時間か後の月を写真に撮ればいい。

本書には、こう書かれている。
 人の眼、人の心が観た太陽と満月が、物理的大きさを
   はるかに超えたものであることに気付く。
 物と心がこれほど大きく食い違う現象は他にない。

この現象を〝月の錯視〟といい、2000年も前から知られていた現象。

本夕、読了。

本記事の冒頭で、
 地(水)平線に、太陽なり月なりをギッシリ並べたら720個。
と書いた。
ここで、簡単な思考実験。
〝地平の月〟が大きいのなら、ギッシリと720個並べられないことになる。
それは おかしい・・・
てなことを2000年前のヒトも考えたに違いない。

著者は『天体錯視の研究』で、学位を得た心理学者。
ただし、著者の研究によっても、大きく見える理由が完全に解決したわけではない。

竿を曲げ、リールのドラグを鳴らす型モノが掛かる。
偏光グラス越しに見る 水面直下まで上がったサカナはデカい。
ただし、デカく見えるのはバレたサカナ。

タモにおさまるサカナは なぜか小さい(^^;
あァ、〝水中のサカナ〟の錯視(^^;

| コメント (4)

2023年11月18日 (土)

『気になる日本地理』を読む

義務教育で習う〝地理〟(高校で習う〝地理〟も同様)は、
 気候・地形・海流などの自然科学
 生活・産業・文化などの社会科学
と、学習範囲が広い。

Photo_20231118192601
こんな喫茶店で読み始め。

東京都中央区には、日本銀行本店があり、三越日本橋本店があり、銀座がある。
勤務・購買・遊興の場。
だが、昼間人口こそ多かったが、夜間人口は減り続けた。
人々が、住む場を郊外に求めたゆえの〝ドーナツ化現象〟。
1997年、ここの人口は、7.2万人にまで減った。

バブルが はじけ地価が落ち着いたことと、高層集合住宅の建設が進んだことで、ここに住もうとする人が戻ってきた。
今年の人口は、17.5万人。

札幌・大阪・福岡の中央区でも、人口が増えていると本書。
〝アンパン化現象〟と いうらしい。

本夕、読了。

北海道人で、〝愛媛〟を書け、その県庁所在地が〝松山市〟だと言えるヒトの割合は どれほどだろうか。
同じく、北海道人で、〝茨城〟を書け、〝いばら〟と発音し、かつ、その県庁所在地が〝水戸市〟だと言えるヒトの割合は どれほどだろうか。

〝地理〟の学習範囲は、漢字の読み書きにまで及ぶ。

| コメント (0)

2023年11月12日 (日)

『「利他」の生物学』を読む

〝利〟とは、我が身の不利をかえりみない、他者への奉仕・献身。
そもそも生物は、食うか食われるかの弱肉強食の〝利〟の生存競争を生き抜くことで、種をつないできた。
弱肉強食とまで言わずとも、弱者衰退・強者繫栄・適者生存。

本書は、そんな生命観の向こう側にある生物界の現実を見せてくれる。
生物にとっての〝利〟と〝利〟は表裏一体。
どころか、表表一体、裏裏一体。

副題は、
『適者生存を超える進化のドラマ』

Photo_20231026065601
こんな飯屋で読み始め。

本書は、植物学の専門家と動物学の専門家の2名による共著。
本書で言う〝利他〟とは、〝共生〟のこと。

植物と動物の違いで一番大きいのは〝葉緑体の有無〟ではなかろうか、というのが2人の生物学者の一致した結論。

ところで、砂浜に棲む体長30マイクロメートル(0.03ミリメートル)の微生物の〝ハテナ・アレ二コラ〟。(注)

〝ハテナ〟は体内に緑藻を宿す(共生している)ので、体色は緑。
緑藻の葉緑体が光合成することのみが命の元。
なので、口はない。
〝ハテナ〟は植物。

本夕、読了。

〝ハテナ〟の繁殖は分裂によるが、緑藻は分裂しない。
よって、緑藻は〝ハテナ〟の分裂した一方に残る。
分裂した もう一方の〝ハテナ〟は、体内に緑藻を持たないので無色の体となる。
で、その無色の〝ハテナ〟には〝口〟が形成され、摂食を開始する。

ということで、〝ハテナ〟は、植物にもなるし、動物にもなるンだと(@@)(驚愕)

(注)

〝ハテナ・アレ二コラ〟の発見は、日本人。
名前の〝ハテナ〟は、日本語の〝はてな:?〟に由来する。

| コメント (0)

2023年11月11日 (土)

『設計からの発想』を読む

著者は、航空工学者の佐貫亦男(さぬき またお)。

九七式戦闘機(キ27)のプロペラの設計者として有名。
また、気象庁採用の風向風速計を設計したことでも有名。

講談社ブルーバックスシリーズには9冊上梓。
本書は、その内の1冊。

このヒトのプロフィールを、〝工学者〟と同じくらいの比重で〝作家〟と並列して紹介している文章を多く見る。
実際、工学者として高い業績を上げたヒトだが、専門分野の知識をネタにしたエッセーや そのエッセーに埋め込まれたヨーロッパ紀行文やアルプス山行記が実にいい。

Photo_20231111080901
こんな喫茶店で読み始め。(注)

表紙絵の、
 機首部分は、メッサーシュミット BF109
 胴体部分は、スーパーマリン スピットファイア
 機尾部分は、零式艦上戦闘機

副題が、『比較設計学のすすめ』。
まァ、そうガチガチした比較論が展開されるわけではないが、日本人が陥りやすい設計(デザイン)のチョンボがいくつも書かれている。

本夕、読了。

著者の佐貫亦男は四半世紀前の1997年に90歳で逝去している。
で、本書の初版は1979年。
米中が国交を樹立した年で、中国では改革・開放政策が始まった直後。
すべての中国成人男子が着ていたのは人民服。

そんな当時、そろそろ日本でも現在の中国を予見していたヒトはいた。
ただし、予見の程度は ウッスラと。

それよりも更に20年も前の、1957年。
国家主席が毛沢東の大陸で、中国の気象科学技術者らと2ヶ月間仕事をした佐貫亦男は、その時に感じたことを、こう ハッキリと書いている。
 比較設計学をもっとも深刻に適用する国こそ中国であることを
   確信する。
 中国人が(他国の)発想を「横取り」するとはとうてい考えら
 れない。
 この人たちは「学習」するにちがいない。
 「横取り」と「学習」は結果こそ同じだが、その態度には大差
 があり、獲得と習得の差別となって表わされる。

     ―――――――< 中  略 >―――――――

 その巨大な人口と、柔らかい頭で、成果は期して待つべきであ
 ろう。
 いくらかの心配は、文明文化の進展とともに頭を持ち上げるか
 も知れない中華思想、中国は世界の中心であるとの発想であろ
 う。

(注)
こんなところに・・・
って、ところにあった喫茶店。
西日の射すカウンター席に置かれたカップはウェッジウッド。
この喫茶店々主は、ハンドミルで挽いた豆でコーヒーを淹れる。

佐貫亦男なら、豆を挽くその音で、ミルがドイツのコマンダンテだと聞き分けるに違いない。
彼は、毎年のようにドイツを訪れ、かの地の小さな町を歩くのが好きだったという。

| コメント (0)

2023年11月 9日 (木)

『宇宙・0・無限大』を読む

著者は、天文学者。
〝0〟は、数学で言う〝0〟ではない。
〝無限大〟は、数学で言う〝無限大〟ではない。

宇宙の始まりが、〝0〟ではなく
宇宙の終わりが、〝無限大〟ではない
という話。

Photo_20231107214901
こんな飯屋で読み始め。

内容は義務教育レベル。
なので、私のようなモノでも、最終ページまで読み進んでいける宇宙論。
義務教育レベルに落として書かれた宇宙論ではない。
書かれていることが、私のようなモノにでも読み進められること だけ だということ。

だから、だけしか書かれていない こういった本を読んで、分かったつもりになってはいけない。

本夕、読了。

いけないのだが・・・

全ての物理量が揺らいでいた(正確な値が分からない状態)この世界 の始まり。
全ての物理量とは、位置・速度・エネルギーなど。
〝時間〟もそう。
よって、時間の議論は微小な幅を持つ。
著者は、
 宇宙の誕生時を確定できない。
 いえるのは、「この宇宙は誕生した」ということだけだ。
と書く。

| コメント (0)

2023年11月 5日 (日)

『NATIONAL GEOGRAPHIC』を読む

『NATIONAL GEOGRAPHIC』日本版11月号。
特集は、〝荒らされる水産資源 世界の漁業が危うい〟。

Nationalgeographic_20231105153301
こんな飯屋で読み始め。

Photo_20231105164301
アラスカ ブリストル湾。
川をのぼるためにこの湾にサケが集まる。
それを獲るために数百隻の漁船が網を流す。
上空には、魚群を追う水産会社のヘリ。

本夕、読了。

本書、11月号だが、発行年は1995年。
某施設の建て替えを機に放出したのが『NATIONAL GEOGRAPHIC』。
その一部をいただいた(^^) 

1995年は、Windows95が発売された年。
政権は 自社さきがけ の連立で首相は村山富市、衆院議長は土井たか子。
1月に阪神・淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件が発生している。

〝荒らされる水産資源 世界の漁業が危うい〟というフレーズ。
当時、〝危う〟くさせている その原因はヒトだった。
今は、それに〝気候変動〟がプラスされる。

| コメント (2)

2023年11月 1日 (水)

『つげ忠男コレクション』を読む

つげ 義春(1937年-)、つげ 忠男(1941年-)兄弟の作風・画風はよく似る。
よく似るが、ヒトこま目を見るだけで兄弟の作風・画風の違いが分かる。

今回読んだのは、弟のほう。

Photo_20231101070301
こんなパン屋のイートインカウンターで読み始め。

12編が、
 釣り師無頼
 放浪渡世
 場末と与太者
 文学遍歴
の4つの章に分けられている。

玄関を出て、30分も歩けば出会えそうな話ばかり。
なのだが、300日間歩いても出会えそうもない話ばかり。
背景は、1950年から80年くらい。
読後に、爽快感とか納得感とかは感じない。
かといって、哀感とか虚無とかも感じない。

吉田類が解説を書いている。
これが力の入れ過ぎで、むしろ滑稽。

本夕、読了。

2018年の夏、つげ忠男と吉田類の網走の喫茶店 デリカップでの対談録が巻末に載せられている。
マンガの話は出てこない。
釣りの話、育った場所の話など。
ところで、この 網走の デリカップ には私も入ったことがある。
ジャズを聴かせる店で、カップはウエッジウッド。

| コメント (0)

2023年10月29日 (日)

ブナの森を歩く

拙ブログの5月14日 の記事は、『ブナの森を楽しむ』。
その記事に きーさんから いただいたコメントに、
 この秋は、ブナの実の大凶作が予想されます。
 森の動物たちは困るでしょうねェ。
とリプライした。

この秋のブナなどの木の実の凶作は、黒松内に限らず全国的。
そのせいで、エサを求めて里におりたクマがヒトに危害を与えているニュースを見聞きする。(注)

ということとは、全然関係なく、春に歩いた黒松内のブナの森を秋も歩きに。

2023102901
渓流の王様は、〝岩魚(イワナ)〟
渓流の女王は、〝山女魚(ヤマメ)〟

画像やや右は、King of Forest の〝ミズナラ〟
画像左端は、Queen of Forest の〝ブナ〟

2023102902
2005年、九州を南から北へ縦断し日本海へ抜けた台風14号は、せたな町に再上陸して東北東に北海道内を走った。
その時の暴風で倒された直径1メートルを超すブナに新しい生命が。
ヒナウオタケ。

全給水量は、
 ・250CC

下山後に食べたのは、奈川ソバ。
長野県奈川村(現 松本市
)の在来種で、現在は黒松内でしか栽培されていない(らしい)。
もっとも、味を評価できる舌を私は持っていない(^^;

Gpslog2

(注)
統計学的な処理ができるほどのデータが集められているのかどうか知らない。
が、ブナの実の豊・凶とクマによるヒトへの危害の少・多に相関関係はないという説が有力らしい。

| コメント (2)

2023年10月25日 (水)

『ことばのごちそう』を読む

拙ブログの8月4日の記事は 『自炊大好き』を読む 。
そこに、6月9日号を最後に〝週刊朝日〟が休刊となったことを書いた。
私が言いたかったのは、〝週刊朝日〟に連載されていた 東海林さだお の『あれも食いたいこれも食いたい』が自動的に休載となったことがとても残念だ。
ということ。

本書は、東海林さだお が書きつづってきた印象的な描写を、食品名を項目にたてて、それを50音順に並べたもの。
アイスクリーム・味付け海苔・アジの開き と続き、綿あめ・ワニ・ワンタン で終わる。
出前・メニューなど、食品名以外の項目も いくつか。

Photo_20231023185401
こんな喫茶店で読み始め。(注)

著者が言うには、本書は、長い文章のサワリ、イイトコ取り。

サワリ、イイトコ取りされた文章は、1項目 半ページから せいぜい3ページ。
これ以上 要約のしようがない。
が、そこをさらにイイトコ取りすると、例えば白湯(さゆ)は、
 白湯はひたすら沈黙を守りつづけている。
 何も発言しないし、何も主張しない。

本夕、読了。

舌にある味蕾(みらい)細胞が脳に伝えるのは〝味〟。
 甘味
 酸味
 塩味
 苦味
 うま味
は、基本五味として 誰でも知っている。
2018年に発見されたのは、味蕾から脳に〝脂肪〟の味を伝達する神経。
基本五味に〝脂肪味〟が加わって、基本六味となる可能性大。
〝カルシウム味〟も加わって、基本七味となることもありうる。

東海林さだお は、この〝脂肪味〟・〝骨味〟を50年も前から言っている。
著者の舌は確か。

(注)
ウェッジウッドのカップでコーヒーをサービスしてくれる喫茶店を またひとつ見つけた。

| コメント (2)

2023年10月21日 (土)

『大人もぞっとする 原典「日本昔ばなし」』を読む

昔ばなしだとか童話だとかは、勧善懲悪・因果応報・いましめ・教訓。
また、美徳は勤勉・倹約・正直・親孝行。
悪徳は嫉妬・散財・怠惰。
まァ、そうだろう。
しかし、その はなしの原典、昔ばなしの そのさらに昔ばなしは、エロだったり、残酷だったり。

Photo_20231019203401
こんなパン屋のイートインカウンターで読み始め。

六部殺し(ろくぶころし)、蛇の婿入り(へびのむこいり)、俵薬師(たわらくすし)など11話。

六部とは全国を行脚してまわる修行僧。
ある六部が、貧農家夫婦のもとに一夜の宿を求める。
その六部が背負ってきた荷物の中に大金があることを知った夫婦。
妻は六部に自分の体を抱かせ、寝入らせる。
寝入った六部の首を夫がカマではねる。

殺した六部のカネで裕福になった夫婦に、子が生まれる。
その子は何年たっても話さず歩かず。
ある夜、突然 話し歩き出した子の顔が あの六部の顔に。
夫は子を殺し、妻を殺し、自身は首を吊る。

本夕、読了。

信仰による救いがなく
ヒーローも現れず
偶然によってもたらされる幸せなどなく
エンドがハッピーでなく
ヒトはあっけなく死ぬ

「日本昔ばなし」の原典に書かれているのは、現実の厳しさ(^^;

| コメント (0)

2023年10月15日 (日)

羊蹄山麓にて

芽吹きの春が奇跡の季節なら、枯れの秋は必然の季節。
秋晴れに誘われ、登山靴を持って羊蹄山(1898メートル)まで。

この時季の ここを表現するのに必要な秋色は、赤・黄・茶、そして青。
しかし、つい この間まで、暑くて熱い夏だったせいだろう。
この地の秋色は進んでいない。

23101501
秋の濃い青空に羊蹄山。
左手の赤はサルビアの花。
右手の赤はホウキグサ。

| コメント (0)

2023年10月14日 (土)

『さみしい男』を読む

文化審議会が答申し、内閣が告示する常用漢字表には、〝寂〟はあるが〝淋〟はない。
その〝寂〟の読みだが、
 音読みで、ジャク(静寂:セイジャク) セキ(寂莫:セキバク)
 訓読みで、さび (寂しい:さびしい 寂れる:さびれる)
〝さみ・しい〟とは読まない。

〝寂しい〟の語源は、古代の〝さぶ・し〟、〝さび・し〟。
〝さみ・しい〟という発音は比較的最近、江戸になってから。

本書名の『さみしい男』は、もっともっと最近。
21世紀の〝男〟。

Photo_20231013075201
こんな飯屋で読み始め。

著者は、教育学・心理学の専門家。

〝さみしい男〟とは、
 どこにも居場所のない中年男
 女を口説けない若い男
らのこと。
 恋愛しない男
 コミュニケーションできない男
そんな〝さみしい男〟から抜け出す道を探り、これからの男たちの生きる指針を提示する。
と、著者。

本夕、読了

女性から見た男性、
 いい人は多いけれど、いい男はいなくなった
らしい。
 疲れている男、女を口説けない男は魅力がない
とも。

そんな〝さみしい男〟から抜け出すための、著者の提言は、
 自分に自信があること
 仕事ができること(打ち込んでいるものがあること)
 前向きなこと
 自分らしい生き方ができること
 自分の内心を自分の言葉で表現できること
 心からのコミュニケーションができること

と、しごく当たり前。
これができないから、さみしくなる。
で、これをできるようにする処方は書かれていない。

もっとも、そんな処方を求める男は、〝さみしい〟を通り越して〝終わってる〟(^^;

| コメント (0)

2023年10月12日 (木)

『うまみの誕生』を読む

コンブからはグルタミン酸。
カツオブシからはイノシン酸。
シイタケからはグアニル酸。
本書には、これら うま味成分についても書かれているが、著者の専門は微生物学。
その専門知識と歴史の博識を重ね、パン・酒・漬物・お茶等々、古代から現在にまで伝わる発酵食品の話が続く。

副題が『発酵食品物語』。

Photo_20231011190801
こんな喫茶店で読み始め。

一夜漬けや酢漬けなら、サラダみたいなもの。
発酵させてこそ漬物。

ニシン漬けなら北海道。
いや いや いや
海のない飛騨の国(岐阜県)のニシン漬け(にしんずし:ねずし)。
これも なかなか。

塩でしめたサバを、日本海側から京都に運んだサバ街道は有名。
同じく塩でしめたニシン。
それを飛騨に運んだニシン街道もあるはず。

本夕、読了。

茶の歴史が書かれている。
中国南部やタイやミャンマーには、乳酸発酵させた茶の漬物がある。
茶の元々は、食用だったようで、飲用の始まりは2千年ほど前かららしい。

〝お~いお茶〟の発売は1985年。
冷たいお茶を飲むようになったのは、2千年の茶の歴史の中では、ごく最近のことになる。

| コメント (0)

2023年10月 9日 (月)

『岩魚の休日』を読む

著者は、2018年死去した 桂 歌丸。

〝岩魚〟は渓流の王様。
〝イワナ〟と読む。
一方、渓流の女王は〝山女魚〟。
〝ヤマメ〟と読む。(注)
いずれも清らかな冷流に棲み、イワナのほうが上流域に棲む。
渓流釣りの好対象魚。

Photo_20231009190001
こんな飯屋で読み始め。

著者は横浜生まれ。
幼少時より、海で竿を出し、長じて船で竿を出し、ヘラブナに竿を出す。
その後、釣魚が絞られて、湖でのワカサギと渓流でのイワナ・ヤマメ。

副題は、
 釣れてよし、釣れなくてよし、人生竿一竿

 釣れなくてよし・・・

私もそう。
 釣ってりゃ楽しい、釣れりゃァなお楽しい

本夕、読了。

落語家稼業ゆえ、1年の3分の1は旅暮らし。
アッチへコッチへ。
丸々1日拘束される仕事でもないし、酒は飲まない。
で、川でも旅館の池でも、水のあるところはどこででも。

仕掛けは全て自作。
魚信を求めて、20キロを歩くことも苦にしない。

1束(そく)は、100尾のこと。
300尾なら、3束。

このヒトには、さらに上の単位が必要。
ワカサギなら10束超え。

〝釣りの合間に高座に上がる〟というのがオチ。

(注)
北海道では〝ヤマベ〟と発音するのが普通。

| コメント (0)

2023年10月 7日 (土)

『捜索者』を読む

作は谷口ジロー。
彼の作品は、拙ブログの一昨年の10月に、
 『K』を読む
また、同年11月に、
 『猟犬探偵』を読む
として、記事にしている。

『K』にしても『猟犬探偵』にしても、作画こそ谷口ジローだが、原作者は別にいた。
が、本書『捜索者』は作・画とも谷口ジローによる。

Photo_20231007192901
こんな飯屋で読み始め。

本書の発行は、つい一昨日。
10月5日。
もっとも、初出は99年でビッグコミックに連載されていた。

彩色された全1ページが、本書のスタート。
青空の雲を背に残雪の山。
手前の緑の斜面に、チョウノスケソウか。
高山植物の群落。
そこに、中原中也の詩『春と赤ン坊』の前半分の節が。
 菜の花畑で眠つてゐるのは……
 菜の花畑で吹かれてゐるのは……
 赤ン坊ではないでせうか?

本夕、読了。

山で親友が遭難死する。
幾年か後、遭難死した親友の中学生の娘が失踪する。
山で暮らしていた主人公が山をおりて、東京渋谷で その娘を探す。

山を歩く者は皆 ロマンチスト。
マンガ家も皆 ロマンチスト。

マンガ。
だからといって、主人公のとんでもない体力・知力・ケンカ強さ・打たれ強さ、ご都合主義なストーリーが許されるわけではないけれど・・・

マンガ。
だから、主人公のとんでもない体力・知力・ケンカ強さ・打たれ強さ、ご都合主義なストーリーは許される・・・

| コメント (0)

2023年10月 1日 (日)

『皮膚のふしぎ』を読む

サハリンに住む3歳の男児コンスタンチンが、全身の80%に負った重度のやけどの治療のために札幌に緊急搬送されている。
ソ連邦の崩壊は1991年。
その前年の1990年のこと。

2019年の京都アニメーション放火殺人事件。
容疑者は、自らも重度のやけどを全身の93%に負い送院されている。

いずれも、救命された。

Photo_20231001083701
こんな喫茶店で読み始め。

著者は皮膚医学者。

皮膚の最外層が角層で、その厚みは0.2ミリ。
すでに死んだ細胞だが、病原体(ウイルス・細菌・アレルゲン)や異物(花粉・ホコリ・大気汚染物質)を物理的にブロックする。
それをくぐり抜けた病原体や異物に対しては、免疫機能を活動させる。

ところで、整形外科で処方される消炎湿布薬のモーラステープ。
これは私には 素晴らしくよく効き、貼って10秒もすると筋肉にまで薬効が届く。

ブロックする仕組みは分かった。
が、本書、薬効成分を通過させる仕組みの説明はない(^^;

本夕、読了。

口から肛門までは つながった1本のクダ。
皮膚は人体の外側だが、口から肛門までのクダの内側も外側だと言えないこともない。
安部公房は、ヒトはクダのような存在だと書いている。
黒鉄ヒロシにいたっては、マンガ 赤兵衛 で、ウエットスーツを裏返すように人体を裏返ししてみせた。

本書によれば、ヒトの皮膚1センチ平方あたりには、数十万から数百万の細菌(皮膚常在菌)が棲息しているそう。
腸内細菌は40兆個。

ヒトは やはりクダなのかもしれない。
本著者は、皮膚免疫と腸内免疫の関係に触れ、皮膚常在菌と腸内細菌の相互関係の研究に深い関心を示す。

| コメント (2)

2023年9月30日 (土)

『物質理論の探求』を読む

18世紀、
 ニュートン  (英:1643年ー1727年)に始まり、
 プリーストリー(英:1733年ー1804年)
 ラヴォアジエ (仏:1743年ー1794年)
 ドルトン   (英:1766年ー1844年)
らによって近代科学が構築された。
本書に書かれているのは、その18世紀の科学史。

Photo_20230928185501
こんな飯屋で読み始め。

著者は科学史研究者。
専攻は化学。

例えば酸素。
 リンゴの切り口が茶色くなるのは酸素ゆえ。
 鉄がさびるのも酸素ゆえ。
 紙が燃えるのも酸素ゆえ。
 呼吸は酸素を取り込もうとするがゆえ。
その酸素を、ヒトはどのように理解してきたか。

水、電気、熱、・・・
それらを、ヒトはどのように理解してきたか。

本夕、読了。

寿命は有限。
いいとこ100年しかないのが大変にくやしい・・・
5万年先、とは言わない。
5千年先、いやいや、2千年先でいい。
その2千年先の、人類の知性の到達点を見てみたい。

その時、
物質のその先の
 生命とは何か
 時間とは何か。
我々は、それを理解した過程の科学史を読むことができるかもしれない。

| コメント (0)

2023年9月24日 (日)

『家裁調査官は見た』を読む

日本の法曹人口の概数は、
 弁護士が3万人強
 裁判官が2千8百人弱(注)

裁判を維持するのに必要な調査を行うなどして裁判官をサポートする仕事を行うのが、裁判所調査官。
 ・最高裁判所では、判事(地方裁判所裁判官)が就く
 ・高等および地方裁判所では、知的財産の専門家と租税の専門家が就く
以上の調査官が法律家なのに対し、
 ・家庭裁判所(以下、家裁)では、カウンセラー(臨床心理士・家族心理士
  など)が就く

いずれの裁判所の調査官も、国家公務員。

Photo_20230910112501
こんな飯屋で読み始め。

本著者は、社会福祉学部教授として学生を指導しているが、家裁調査官として17年間の勤務経験を持つ。
家裁が扱うのは、家庭に関する調停や少年の保護事件の審判など。
だから、家裁調査官は、家庭、家族、少年少女、その親たちに深く立ち入ることになる。

本夕、読了。

家裁調査官が大事にすることは〝聞くこと〟だ。
と、本著者。
が、そのことだけではヒトは救えないことを〝苦い思い〟として本著者は書く。

覚せい剤を使った17歳の少女が、著者にこう訴える。
「チャンスが欲しい。(少年院ではなく)社会で立ち直りたい」

で、著者の裁判官への意見具申は、
「この子を少年院に送るのは適当ではない。
 適切な環境を整えて社会の中で更生をはかるのが最善である」

その1ヶ月後、変わり果てたように目はくぼみ肌の潤いを失った少女が言う。
「ヤクザっていうのはすごいよ。
 シャブやってる女の子がいるって聞いたら、そこへサーっと集まって来るん
 だよ。 本当にすごいよ」
と。
ヤクザに連れ回され、1日に7回も覚せい剤をうたれ そのたびに性交。

女子少年院に送られることで、少女は やっと適切な環境を得る。

(注)
検事はもっと少なく、2千人弱。

| コメント (0)

2023年9月23日 (土)

『いろは俳句絵本』を読む

〝多芸は無芸〟といい、〝天は二物を与えず〟ともいう。
いや いや いや。
多芸有芸・多芸多才、天から二物どころか三物も四物も与えられたヒトはいる。
著者はそんなヒト。

著者の本職はナンなのか。
 一級建築士
 折り紙講師
 タップダンス講師
 茶道(大和遠州流)教授
 墨戯(水墨画)講師
で、陶芸家で俳人。

Photo_20230923161501
こんな飯屋で読み始め。

〝い〟をアタマに
〝ろ〟をアタマに
〝は〟をアタマに
というふうに、一ページに一句。
いろは順に俳句が並べられている。

本書は、本。
も著者による。

器用なヒト。
というには、レベルが高い。

本夕、読了。

俳句だから季語がある。
札幌在住のせいか、使っている季語に多いのは〝冬〟。
〝秋〟は少なく三句のみ。
うち一句のアタマは〝ゆ〟。
 指先の
 トンボ一会(いちえ)の
 空へ発(た)つ

| コメント (0)

2023年9月18日 (月)

『あなたの中の異常心理』を読む

著者は精神科医。
本書には、
 〝臨床医として現代人の心の危機に向かい合う〟
と、紹介されている。

Photo_20230917215401
こんな喫茶店で読み始め。

著者が、
 〝現代人の心の危機に向かい合っている〟
ことはよくわかる。
〝心の危機〟とは、〝異常心理〟のこと。

もし、
 〝異常心理〟は回避しなければならない
また、ひとたび身に付いた
 〝異常心理〟は克服しなければならない
のであれば、その
 回避法(予防法)
 克服法(療養法)
が述べられてしかるべき。
が、本書に書かれているのは、〝異常心理〟の実例(分析)ばかり。
回避法・克服法は書かれていない。

本夕、読了。

本書の論調には大いに異議あり。

表面に行動として現れて、人間関係にトラブルを発生させる〝異常行為〟ならともかく、内面に隠れて 当人のみが知る〝異常心理〟をどうしろと。
そもそもが、心理に〝異常〟とか〝正常〟とかあるのだろうか。

ウラ・オモテのないヒト
カゲ・ヒナタのないヒト
見せられない 胸の内 のないヒト

ンなヒトの心理を〝正常〟と評価してよいものだろうか。
〝無害〟
とは言えるが。

| コメント (2)

2023年9月10日 (日)

『大人のための「中学受験の算数」』を読む

著者は、物理学と指揮を学んだ理芸両道のヒト。
現在は、数学塾の主宰者。

本書で扱っているのは、小学6年生が中学入学のために臨む試験問題。
なので、数学の本ではなく算数の本。

掲載されている算数は24題。

Photo_20230909120301
こんな喫茶店で読み始め。

中学入試の出題だから、小学校6年間で習う範囲を越えない。
が、中学卒業者、高校卒業者。
どころか大学卒業者でも、さらには解答時間を5倍に延長されたとしても、満点はおろか合格水準レベルにまで到達できるだろうか。

本書名、
 『大人のための「中学受験の算数」』
副題は、
 問題解決力を最速で身につける
そして、帯には、
 難関中の入試問題は、最高の教材だ!
とある。

これから中学に入ろうとする小学校6年生の問題解決力が、大人の頭の使い方の薄さを気付かせる。

本夕、読了。

本書によれば、〝難関中〟入学を目指す小学生の多くは、3年生の2月には入塾すると。
といっても、塾で文字式や方程式など、中学校で習う学習範囲の教授なんぞはしない。
塾で扱うのは、あくまでも小学校6年間の学習範囲内。
本書で教えられるのは、10の発想法・考え方。 その10とは、
 ①逆を考える
 ②情報を図や表にする(視覚化)
 ③差や比を考える(相対化)
    ・
    ・
 ⑧対称性を使う
 ⑨言い換える
 ⑩評価する

次は、ある中学校の入試問題。
Nada
図1で、
 入射角イと反射角アは等しい
と、鏡と光の関係が説明される。
 
図2で、3辺が鏡で構成された三角形ABCと、その内部を反射しながら繰り返し同じ経路を進む光の様子が示される。

そして、
 角ウを求めよ。
なんて、問題文には書いていない。
中学の入試問題、解くのは小学6年生。
問題文に書かれているのは、
 角ウの大きさは何度ですか。

⑧の、対称性を使って考えると、
 角ウの大きさは 28°

| コメント (0)

2023年9月 6日 (水)

『美しすぎる「数」の世界』を読む

副題は、
 「金子みすゞの詩」で語る数論(注1)

著者は数学者。
〝数の新しい世界を知ることで、目の前が開けていく感じ〟
と、
〝金子みすゞの詩が気付かせてくれる、身のまわりの世界
 の不思議〟
に共通するものを感じると言う。

30編の金子みすゞの詩に、数論を重ねていく。

Photo_20230905200201
こんな喫茶店で読み始め。

金子みすゞの詩の〝そらの いろ〟

 うみは、うみは、なぜ あおい
 それは おそらが うつるから。
   < 中 略 >
 だけど おひるの おひさまは、
 あおかないのに、なぜ あおい。
 
 そらは、そらは、なぜ あおい。

に重ねて、2次式と素数が語られる。(注2)

本夕、読了。

以下、本書の記述に従って。
ここでいう 2次式 とは 
 f(x)=x
2x+A
という形。
ここで、
 A=2,3,5,11,17,41
とすると、
x=0 から A-2 までの A-1個の連続する X の値ですべて素数値をとる。
たとえば、
 A=17
のときは、
 f(x)=2x+17
とおいて、
 f(0)=  17
 f(1)=  19
 f(2)=  23
 f(3)=  29
 f(4)=  37
 f(5)=  47
 f(6)=  59
 f(7)=  73
 f(8)=  89
 f(9)= 107
 f(10)=127
 f(11)=149
 f(12)=173
 f(13)=199
 f(14)=227
 f(15)=257
と、確かに素数が並ぶ。

 A=2,3,5,11,17,41
の その先は・・・
わかっていない。
本書には、ほかにも素数を生成する2次式が紹介される。
そして、著者は こう書く。
〝2次式の素数の問題を通して、限りなく深い世界が
 広がっているのを見ることができる〟

もっとも、私の理解力では、〝限りなく深い世界が広がっている〟のを見ることができたとは とても言えない。
しかし、〝限りなく深い世界が広がっている〟のを感じることはできた・・・
ような気がする(^^;

(注1)
〝数論〟とは、
 整数(・・・,ー3,ー2,ー1,0,1,2,3,・・・)
について研究する数学の分野。

(注2)
〝素数〟とは、
 ・2 以上の自然数
 ・正の約数が 1 と自分自身のみ
な数で、無限に存在する。
2 3 5 7 ・・・ 89 97 101 ・・・ 983 991 997 ・・・

| コメント (0)

2023年9月 3日 (日)

『加害者家族』を読む

以前、新聞で読んだ記事。
車庫出し前進時、祖父が幼い孫をひき殺してしまう。
車庫入れ後退時、母親が幼い我が子をひき殺してしまう。
いずれも過失・事故。
ひかれたほうの孫・子は害者だが、ひいたほうの祖父・母を害者とは言いづらい。

不幸。
救いようのない不幸だが、責めるべき対象は自分自身のみ。
細く暗いが 歩むべき贖の道が見えないこともない。
そもそも、〝〟ではない。
ように思う・・・

Photo_20230902183101
こんな喫茶店で読み始め。

本書で扱っているのは、そんな意図しない過失・事故の話ではなく、故意の殺人。
殺されたほうには、ひとかけらの落ち度もない。

殺されたほうは害者、その家族は害者家族。
殺したほうは害者、その家族は害者家族。

害者家族は もちろん不幸。
が、害者家族にも大きな不幸が襲う。

著者はNHKの報道番組ディレクター。
書かれていることは著者自身の取材による。

害者は 小学生5人(注)
内、2人死亡
害者は、14歳、中学3年生
害者家族宅の構成は、父・母・害者・弟が2人

本夕、読了。

警察は害者家族宅に起こるだろう不幸についても配慮する。
で、家宅捜索令状呈示の その前に、2人の弟を親戚宅に避難させることを提案・協力する。

それからの日々。
父親は苦しむ。
 弟たちはどうなるのか。
 誰が遺族に詫びに行くのか。
 捨てきれない 何かの間違いであって欲しいという思い。
 
そんな父親に担当警察官は同情を示しながら、
 「あなたたち家族への厳しいマスコミ報道、連日の調書取りなど
  で、つらく苦しい気持ちはわかります」
そして、こう質問する。
 「お父さん、2月10日と3月16日に殺された被害者の名前を
  ご存知ですか?」

父親は、被害者たちの名前を知らずにいたことを指摘され愕然とする。
そして、自分たちは、害者家族としての苦痛を決して口にしてはいけないことを知る・・・

(注)
1997年の神戸連続児童殺傷事件。
いわゆる、酒鬼薔薇聖斗(さかきばら せいと)事件のこと。

| コメント (0)

2023年9月 2日 (土)

『職人』を読む

著者は永六輔。
著者が聞いた 職人の語りの数々が並べられている。
そのひとつは、
 残らない職人の仕事ってものもあるんですよ。
 えェ、私の仕事は一つも残ってません。
 着物のしみ抜きをやってます。 着物のしみをきれいに
 抜いて、仕事の跡が残らないようにしなきゃ、私の仕事
 になりません。

Photo_20230831213501
こんな飯屋で読み始め。

人間国宝のおばァちゃんが織った紬(つむぎ:絹織物)。
それと、東レ・旭化成が織った化繊の紬の違いの判別はむずかしい。
人間国宝のおばァちゃんや沢村貞子が着れば、
 「これ、ヘンだなァ」
と思えるくらい。
らしいのだと、著者。

フライフィッシャーはバンブーロッドを手にしたがる。
釣竿職人の使う素材は竹。
が、敏感、折れないのはグラスファイバーの竿。
と、著者。

本夕、読了。

著者の大ベストセラーは『大往生』。
ところで、1997年、NHKTVドラマの『大往生』。
主演の森繁久彌が演じた役は 残らない仕事をする〝しみ抜き職人〟。

| コメント (0)

2023年8月27日 (日)

『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』を読む

題名には、
 カラスはずる賢い
 ハトは頭が悪い
 サメは狂暴
 イルカは温厚
とあるが、
 カラスがずる賢い話も
 ハトは頭が悪い話も
 サメが狂暴な話も
 イルカが温厚な話も
出てこない。

ヒトはカラスを嫌い、カモメを好む。
だから、
 カラスは追い払われ
 カモメはエサをもらえる
著者は、そんなことに理不尽さを感じながら研究活動を続けている動物行動学者。
専門は鳥類。

Photo_20230826182701
こんな飯屋で読み始め。

動物を見るさいに著者が我々に望むのは、〝事実に基づく、ニュートラルさ〟。
で、書かれているのは、動物の実際の行動と そのニュートラルな解釈・理解。

本夕、読了。

鳥は、前足を犠牲にして翼にした。
コウモリは、前足だけでは足りずに、後足・尾まで連なった皮膜を張って翼とした。

著者は、こう書く。
その結果は、どうなったか。
哺乳類は4300種。
内、一番多いのがネズミ目で1400種。
次が翼手目(コウモリ)で、1000種。

| コメント (2)

2023年8月22日 (火)

『ロバのスーコと旅をする』を読む

著者は職を辞し、ロバと一緒に、
 イラン国内を  ’22/3/ 4 ~ ’22/ 4/12  800キロ
 トルコ国内を  ’22/5/18 ~ ’22/ 7/23 1200キロ
 モロッコ国内を ’22/9/ 4 ~ ’22/12/27 1500キロ
を歩く。

Photo_20230822201301
こんな飯屋で読み始め。

著者は、
「ロバが旅に出たところで馬になって帰ってくるわけではない」
という西洋のことわざを出す。
「本質は簡単に変わるものでない」
という意味だが 実際にロバと旅した著者は、半分は正しいが、半分は間違っていると書く。

ところで、著者自身はどうか。
ロバのままで帰国するのか。
それとも、馬となって帰国するのか。

以下は、全然 別な話。

馬をひき、徒歩での4ヶ月の旅。
ドイツからスイスを経由してアルプスを越え、イタリアまで。
旅人は、Dietmar Obertとその妻Midori。(注)
馬の名はGina。

旅の終わり。
自分は馬に変わっているのか、ロバのままなのか。
ンなことはどうでもいい・・・
そんな素晴らしい旅の動画は4分11秒。



(注)
Midoriとは終日(ひねもす)船長さんの娘さん。

| コメント (0)

2023年8月13日 (日)

『読むクラシック』を読む

私、歌うことも演奏することもダメ。
しかし、聴くのは何でも。
ポップスでも浪曲でも。
メールの着信音も、カトリックの典礼聖歌も。
英国軍楽隊のバグパイプの行進曲も、2000メートルの高所に設営したテントのフライシートを叩く雨の音も。
曹洞宗の僧の読経も、アーニスのホールでの中学生の吹奏楽曲も。

Photo_20230813154101
こんな飯屋で読み始め。

話題となるのは、スメタナの『わが祖国(モルダウ)』から、メシタンの『世の終わりのための四重奏曲』まで46作品。
その46曲が流れるのは、
 ときに、焼き鳥屋
 ときに、真冬のオスロ
 ときに、勤め先の工場
 ときに、コペンハーゲンのタクシーの中
 ときに、仙台の自宅

本夕、読了。

中学校の同級生の一人がクラシックを聴く男。
何度か彼の部屋に上がってレコードを聴かせてもらったことがある。
が、そこはそれ、私のこと。
レコードを聴くことよりも、彼の持つ音楽のウンチク話を聞くのが面白かった。

本書の読み進めは、
 耳は、youtubeで音源を拾いながら
 目は、中学の同級生から話を聞くノリで

| コメント (0)

2023年8月 6日 (日)

『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』を読む

本書の著者は、ドイツ近代史を専門とする二人の日本人研究者。
本書内で使われている言葉は日常語。
文章は平易。
また、書かれている歴史事実は、私のような者でも既知。
歴史の解釈・評価もストレート。

が、学問として歴史と向かい合うヒトたちの書いた本。
大変に高い位置からの著述が続く。

上で、〝私のような者〟と書いた。
〝私のような者〟とは〝バカ〟と同義(^^;

ところで、ナチズム(独: Nationalsozialismus)を、Google翻訳で 独→日翻訳すると〝国家社会主義〟。

Photo_20230805172201
こんな飯屋で読み始め。

本著者らの基本的立場は、
 ナチスは「良いこと」もした
ではなく、
 ナチスは「良いこと」をしていない

・アウトバーン
・歓喜力行団
・フォルクスワーゲン
・家族政策
・環境保護
・健康政策
をネタに、ナチスは「良いこと」をしていないと著者らは説く。

本夕、読了。

本書では、ナチズム(独: Nationalsozialismus)は、〝国家社会主義〟ではなく〝国民社会主義〟と訳すべきであるという。
ことほどさように、本書内の著述は七面倒くさい。
アタマをオーバーヒートさせないで読み進められるヒトは、強い脳ミソを持っているに違いない。

私は、読み進めるごとにアタマがクールダウンしていった。
上でも書いたように、〝バカ〟ゆえ(^^;

| コメント (2)

2023年8月 4日 (金)

『自炊大好き』を読む

〝週刊朝日〟に1987年から連載されているのは、東海林さだお の『あれも食いたいこれも食いたい』。
連載されたコラムは、3年に2冊ほどのペースで文庫本化され、その数 50冊近い。
私は、それを全部読んでいる。

本書は、連載の選集。
〝自炊〟と書いて〝ソロメシ〟と読ませる。

Photo_20230804204701
こんな喫茶店で読み始め。

『コボちゃん』の 植田まさし は天才。
『アサッテ君』の 東海林さだお も 植田まさし に並ぶ天才。

このヒト、ありとあらゆる食べ物、時には〝白湯〟さえ評論する。
いや、〝評論できる〟ヒト。

本書で、著者が作って食うのは、ピザ丼・チャーシュー・フライドポテトソバ・タコ焼き・チャーハン・カツ丼等々 30食ほど。
チャーハンやカツ丼は誰でも知っているが、ピザ丼やフライドポテトソバとなると本書を読まないと知ることはないだろう。

ぼたもち・大福からの連想で、マーマレードやリンゴジャムを具にしたオニギリをウマイと感じる舌の持ち主の私。
味覚だけは、私は 東海林さだお 並み(^^;

本夕、読了。

ところで、〝週刊朝日〟と〝サンデー毎日〟は新聞社発行の週刊誌の最古参で、ともに1922年創刊。
が、刊行100年を超えたところで、一方の雄の〝週刊朝日〟が力尽き、今年の5月30日発行の6月9日号を最後に休刊。
よってもって、1987年から〝週刊朝日〟に連載が続いていた 東海林さだお の『あれも食いたいこれも食いたい』も自動的に休載となった。

| コメント (2)

2023年8月 2日 (水)

『日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?』を読む

本著者は、〝くう〟に〝喰う〟を使っている。
拙記事も、〝喰う〟で統一する。

書名では〝日本人は〟とあるが、書かれているのは〝著者自身が〟喰った肉のこと。

狩り、解体し、料理し、喰う。
ただし、狩り、解体し、料理するのは著者自身ではなく、猟師。
狩りの手段は、ワナ、散弾、ライフル。

Photo_20230730181901
こんな喫茶店で読み始め。

著者が喰ったのは、南は西表島のイノシシから始まって、北は礼文島沖のトドまで。
その間に、シカ・タヌキ・アナグマ・ハクビシン・カモ・クマ・ウサギ。

著者はカメラマン。

カメラを持って、著者は猟師と共に、
 山に入り
 雪の斜面を歩き
 真冬の海に乗りだす。

狩られた獲物にとどめを刺し、放血し、皮をはぎ、ハラワタを抜き、解体し、肉を分ける。
そして、焼く、煮る。
時にはナマで。

著者の撮ったそれらの写真が、本書に添えられている。

本夕、読了。

塚は多い。
一方、動物を喰ったことを示す塚は少ない。

今は どうだろう。

スーパーでは、鮮魚と精肉の売り場スペースが拮抗。
が、ハム・ソーセージ・ベーコンを含めると、ミートがやや優勢。
街なかではチキン・バーガー・牛丼が、海鮮系を圧倒。

ビジネスが我々の喰いをコントロールしている。

| コメント (2)

2023年7月30日 (日)

『帰艦セズ』を読む

著者は吉村昭(1927年-2006年)。
私は、以前に、このヒトの遺稿集を読み、拙ブログに  『死顔』を読む  という記事にしている。

『帰艦セズ』の〝艦〟とは、帝国海軍の巡洋艦 阿武隈(あぶくま)。

Photo_20230726190301
こんな喫茶店で読み始め。

阿武隈がフィリピンのネグロス島沖で米軍との戦闘のすえに沈没させられたのは、1944年10月。
その2ヶ月前。
小樽港に停泊中の阿武隈から上陸した機関兵が行方不明になり、のち死亡しているのが確認される。
『帰艦セズ』は その史実を下敷きに、創作を上塗りした作品。

著者は、もう一人、軍隊から脱走した経験を持つ人物を創作する。

本夕、読了。

著者が創作した人物は、軍隊を脱走後、北海道でタコ部屋作業員として生き延びる。
戦後は東京都下の市の公務員になり、定年まで勤めあげる。
そして、話の本題はそこから。

阿武隈に帰艦しなかった機関兵の遺族(母親・妹)、機関兵の上官に、定年退職した公務員は たどり着く。
著者に地方公務員に就いた職歴はないが、記録文学者としての自身をこの定年退職した地方公務員に重ねているのは明らか。

描かれているのは、著者自身である。

| コメント (0)

2023年7月25日 (火)

『政治家の酒癖』を読む

米国大統領は、初代のジョージ・ワシントンから現職のジョー・バイデンまでで46代45人。
内、米国史上ただ一人 任期途中に辞任した大統領は、第37代のリチャード・ニクソン。
 ベトナム戦争からの全面撤退
 ソ連との緊張緩和(デタント)
 中国への電撃訪問
 ドルの金交換停止・ドル切り下げ(ニクソンショック)
などと、歴史的トピックスをニクソン政権は成しているが、キッシンジャーなど、側近が優秀だったから。

Photo_20230723234601
こんな喫茶店で読み始め。

本書はニクソンを、
 シラフの時から「狂人」ぶりをいかんなく発揮していたが、
 酒が入ると手のつけようがなかった。
 泥酔し、無謀とも言える攻撃命令を出すことも少なくなかっ
 た。
と、評している。

ニクソン政権時の1969年4月。
31人乗り組みの米国の電子偵察機が北朝鮮に近い日本海で撃墜されている。
撃墜したのは、北朝鮮の2機の戦闘機。
で、ニクソンが軍制服組トップの統合参謀本部議長に命じたのは、北朝鮮への核爆弾の投下。

本夕、読了。

大統領補佐官だったキッシンジャーが統合参謀本部議長に連絡したのは、
 大統領は酒に酔っている。
 明日の朝まで待て。

ところで、バイデン大統領は、酒を飲まない。
プーチン大統領も飲まない。
習主席も飲まない。
菅前首相も飲まない。

現首相の岸田さんは、酒豪であることをウリにしている。

| コメント (0)

2023年7月17日 (月)

『就職先は海上自衛隊』を読む

海上自衛官の3尉(初級幹部)への任官は、防大なり一般大なりを卒業後に広島の江田島にある幹部候補生学校での1年間の教育を終えた時点。
なお、さらにその後、実習幹部としての訓練を5ヶ月の遠洋練習航海で受ける。

〝かしま〟は、初めて女性自衛官の乗艦を可能とした練習艦。
この〝かしま〟の就役前は、女性自衛官は遠洋練習航海に参加できなかった。

127名の男性実習幹部とともに、〝かしま〟に実習幹部として乗艦して海自初の遠洋練習航海に出た女性自衛官は13名。
その13名の内のひとりだったのが、本書著者。
新造艦〝かしま〟が就役した1995年のことで、防大が初の女性卒業生を出す前の年。

著者は、一般大学文学部出身者。

Photo_20230716221001
こんな喫茶店で読み始め。

本著者乗艦時の遠洋練習航海の航路は、西回りの世界一周。
 総航程 28000海里(52000km)
 総日数 157日
  航海 107日
  停泊  50日
寄港10ヶ国と12回の寄港は以下の順。
 シンガポール(シンガポール)
 ムンバイ(インド)
 アレキサンドリア(エジプト)
 イスタンブール(トルコ)
 ナポリ(イタリア)
 ルアーブル(フランス)
 ハンブルク(ドイツ)
 リスボン(ポルトガル)
 ノーフォーク(米国:バージニア州)
 バルポア(パナマ)
 サンディエゴ(米国:カリフォルニア州)
 パールハーバー(米国:ハワイ州)

・発光信号(光の長短で表したモールス信号)
・手旗信号
・旗旒(きりゅう)信号(国際信号旗の組み合わせ)
の三つの視覚信号の(発信能力はともかく)受信は、幹部自衛官に求められる能力。
幹部候補生学校で訓練され練習航海中も訓練されるが、この視覚信号の受診能力差が大きいことが大西洋航海中に問題視される。
で、リスボン入港直後に査定を行い、基準に達しない者は上陸禁止にするとの通達が出される。

著者は、能力差が大きく低い一人。
が、特訓、追試の結果、ユーラシア大陸最西端の地に立つことがかなう。

本夕、読了。

練習艦といえど、自衛艦は軍艦。
ゆえに、外国の港に接岸時においても大使館と同じ治外法権。
自衛官にパスポートは求められない。

Nipponmaru
今日の室蘭港。
中央埠頭に接岸した日本丸。
本船訓練後に受験できるのは、3級海技士・機関士。

〝かしま〟での遠洋練習航海後に受験できるのは、2級海技士・機関士。(注)
まだ1年半しか経っていないが、すでに海上自衛隊に就職した身。
2級海技士・機関士試験に落ちるわけにいかない。
訓練は厳しい。

著者の遠洋練習航海において、インド洋を夜間航海中に実習幹部の1名が行方不明になっている。

(注)
漁船・商船に関わる海技士・機関士と自衛艦に関わる海技士・機関士試験は、厳密に一致しているわけではない。

| コメント (2)

2023年7月10日 (月)

『職業外伝』を読む

AI、DX、ビッグデータ解析。
自動化、複合化。
等々の語を枕ことばに、この先10年、30年の内になくなる職業のことが言われる。
いやいや すでに 仕事がなくなり始めている。
セルフレジは珍しくない。
NHKでは、AIアナがニュースを読む。

そして、必ず言われる。
残るのは、
 コミュニケーションを必要とする仕事
 創造性が必要な仕事
だと。

Photo_20230709222401
こんな飯屋で読み始め。

菓子職人が、チョコやクリームで造形する。
それは、パティシエの技、芸の具現。
本書に書かれているのは、そんなマットウな職人ではない。

マットウな芸術家コースを歩んでいたヒト。
在籍していたのは東京芸大の彫刻科。
が、3年で中退する。

素材はアメ。
シャベクリで客を集める。
シャベリながら、アメで造形し日銭を稼ぐ香具師(やし)。

80℃に温めたアメを、こね・のばし・切り・着色し、客のリクエストにこたえ、何でも作る。
1個、500円から。

本夕、読了。

500円玉を握りしめた女の子が、彼に、
「オジサン、クモつくって。 お空の雲」
知的障害を持つ子だった。
思わず空を見上げて、
「オレもまだまだだなァ」
と。
今までで、一番うれしくて、一番悲しかった注文だったという。

| コメント (0)

2023年7月 2日 (日)

『実戦・世界言語紀行』を読む

大阪 吹田の万博記念公園に、1977年に開館したのが国立民族学博物館。
その初代館長が、本著者の梅棹忠雄(うめさお ただお)。
館長就任から10年ほどのち64歳で著者は両眼とも失明するのだが、執筆意欲は衰えず。
著作数は むしろ失明後のほうが多い。
本書も、失明後の著書。

元々は、動物学を専攻した理学博士。
理学部在籍中から、興味の先はヒト。
それも生理学的興味ではなく、集団としてのヒト、文化的興味。

Photo_20230702203401
こんな飯屋で読み始め。

書かれているのは、著者の民俗学的調査歴。
民俗学的調査だから、そのフィールドが東京やニューヨークであるはずがない。
都市から遠い奥地。
あるいは、言葉が入り混じる国境の地。

モンゴル・中国をスタートに、東南アジア、ヨーロッパ、南アメリカ、アフリカへと。
調査は、そこに住む民族の言葉の習得から始まる。
日本語で書かれた文法書も辞書もない言葉が使われている地に入ることもある。
それでも、現地に入ってから1ヶ月で、調査に不自由しない程度の会話ができるまでの現地語が身に付く。

本夕、読了。

〝現地語が身に付く〟と書いたが、もちろん受動的態度では現地語は身に付かない〟
1日にマスターする単語数は300。
語学に限らず、何事も集中力。
が、どれだけ集中しても、ダメなヒトはダメ。
オレのこと(^^;

| コメント (2)

2023年6月25日 (日)

アタリはあったが

21日の夏至の日の日出は、3時58分だった。
この日を境に、日出時刻は遅くなる。
今日のそれは、3時59分。

4時、出航。

ベタナギ。
ベタナギなら根。

2023062501
今日の出竿は、こんな風景の見える海域。

雲が低く、空も海も暗い。
はるか東の水平線上に隙間があり、そこだけに日の気配。

ホッケがいるらしい。
が、毛バリを沈めるもスカ(^^;

2023062502
で、海域を変えて、再出竿は、こんな風景の見える海域。
しかし、ここでもスカ(^^;

2023062503
ならばと、再度海域を変えて、再々出竿は、こんな風景の見える海域。
やがて晴れわたり、刺すような日射。

横着釣法を改め、ジグを放り、底をチョンチョンと。

2023062504
アタリはあった。
アタリはあったが、こんなのが2枚。
とてもヒラメとは呼べない。
リリース。

| コメント (2)

2023年6月24日 (土)

それだけ(^^;

家を出る時は、霧雨。
が、輪西あたりから それも上がり、路面が乾いた。

7時30分、出航。

20230624
今日の出竿は、こんな風景の見える海域。

北海道では、ブリ・フグ・ウナギ・ヒラメを調理して出す飲食店は少ない。
それらは北海道のサカナではなく、それらを流通に乗せるだけの水揚げ量がなかったせい。
それが 近年、ブリ・フグの都道府県別漁獲高の第1位は北海道なのだそう。

私の竿にも、先日、カタのいいトラフグが掛かった。
今日は、良カタのマフグが掛かった。
それだけ(^^;

ところで、この海域に浮かぶ艇が狙うのはヒラメ。
今日、ここに浮かんだ ある艇は、2人で、22枚だか24枚だかのヒラメを掛けたんだと。

| コメント (2)

2023年6月18日 (日)

右向き

北西の風。
その風が、交通安全旗をたなびかせ、街路樹の枝を揺らす。

いくらか 風が落ち着いた。
7時20分、出航。

沖の波は、200波に1波くらいの頻度で頭が白く崩れる。

2023061801
今日の出竿は、こんな風景の見える海域。

風と潮の合成された力で船が押される。
方向は南西。
海岸線とほぼ平行に、船が1.5ノット前後で流れる。

やがて、風の勢力が回復。
頭が白く崩れる波が10波に1波くらいの頻度に増し、釣りをする海況ではなくなった。

釣りをする海況ではなくなる前、ヒラメらしいアタリは何度か。
が、姿を見るところまで浮かせることができたのは1回のみ。

その1回。
タモに収めることができず(^^;

2023061802
結局、船のデッキに上がったのは、これ1尾だけ。
右向き。
ヒラメではなく、イシモチ(^^;

| コメント (4)

2023年6月11日 (日)

午後の釣行

やァ、食った食った。
サカナが掛かったのではなく、私の腹が満ちたということ(^^) 
充実したパワーランチだった。

ところで、サカナ釣りのほうは早上がりだった。
で、後片付けをサボり、コソコソっと雲隠れ。

14時00分、再出航。
腹ごなし釣行。

2023061104
再出航後の出竿は、こんな風景の見える海域。

2023061106
ヒラメも腹が減っていないようだ。
小さいのが1枚(^^;

| コメント (4)

絵鞆マリン倶楽部 春の釣り大会

新型コロナ感染拡大防止のため、多人数での集会が はばかれられていた。
絵鞆マリン倶楽部主催の釣り大会と年末の総会・納会は、しばらく中止のまま。

今日は、久しぶりの集会、春の釣り大会。

私は釣り大会への参加というよりも、パワーランチの準備への参加。
といっても、全くの出遅れ。
豚汁の ささがきゴボウに、ほんの短時間 包丁を使っただけ。

2023061103
パワーランチ。
豚汁・ジンギスカン・焼き鳥、焼きソーセージ。

ごちそうさまでした。

食えなくなった・食わなくなった。
と、いう言葉が、異口同音に。
食が細くなったのは、加齢からくるもの。
我が身も同じ(^^;

| コメント (0)

午前の釣行

来週、21日は夏至。
今時季は だから、日出が早い。
今日の日出は、3時58分。

4時30分、出航。

2023061101
今日の出竿は、こんな風景の見える海域。

オカは風力発電のプロペラが見えないほどの濃いガス、
が、沖は気になるほどではなかった。

今日は、絵鞆マリン倶楽部 春の釣り大会。
私は、パワーランチの準備に参加するつもり。

で、9時30分、早上がり。

2023061102
画像のほかに、小さいのが1枚。
また、デカいトラフグが掛かった。

| コメント (2)

2023年6月10日 (土)

『最期の日本史』を読む

京都から岐阜に向かっていた織田信長。
その彼を殺害するために待ち伏せし、火縄銃を撃ったのは、杉谷 善住坊(すぎたに ぜんじゅうぼう)。
撃ったのは2発。
しかし、弾は急所を外し、信長の負った傷は軽かった。
幕府は室町、足利義昭の治世。
1570(元亀元)年、戦国時代のこと。

この史実を下敷きにして描かれたのが、ゴルゴ13 第500話 『史上初の狙撃者 ザ・ファースト・スナイパー』。(注)
第500話では、善住坊を日本史上初のスナイパーだとしている。

Photo_20230610091401
こんな飯屋で読み始め。

著者は、日本中世政治史を専門とする歴史学者。
本書に書かれているのは、日本史上の人物の 死に際・臨終の様子。

宇喜田直家(うきた なおいえ)は備前(岡山)のヒト。
織田信長に付いたり離れたりという立場にいたが、結局は信長側に付いた戦国大名だった。
目的のためには どんな汚い手を使ってでもという人物だったようで、史料に残る人物評価は低い。

その彼が、大量の下血をともなう病で死の床に就いた時、一番の家来に自分が死んだときに殉死を求める。
その家来、
「私は、あの世のことを知らないので、地獄にしろ極楽にしろ、
 殿の道案内をできない。
 あの世の道案内を希望なら、坊主を殺して差し上げましょう。
 殺した坊主と一緒にあの世に行かれたら、いかがですか 」

本夕、読了。

ところで、直家は敵対する大名を火縄銃で暗殺することに成功している。
善住坊が信長に発砲するより前の1566(永禄9)年のこと。
本書では、鉄砲による要人暗殺を企てた日本史上初の人物は 直家 であるとしている。

ただし、実際に火縄銃の引き金を引いたのは、直家に命じられた臣下の者。

(注)
『史上初の狙撃者 ザ・ファースト・スナイパー』 のストーリーは以下。

善住坊の子孫がゴルゴ13に ある人物の狙撃の依頼をする。
狙撃には、善住坊が使った火縄銃を使うことが条件。
善住坊が信長の狙撃に失敗した火縄銃を使いながらも、ゴルゴはミッションに成功する。

| コメント (0)

2023年6月 6日 (火)

下心マンマンの、下品な平日午後釣行

午後いち、野暮用。
それが すぐにカタがつき、その足でマリーナへ。

14時30分、出航。

2023060601
今日の出竿は、こんな風景の見える海域。

無風。
ベタナギ。

船を押す風はないが、南から北へと走る潮は速く、船は0.7ノット前後で流れる。
ヒラメを掛けるには、悪くない雰囲気。

一投目、30秒でアタリ。
しかし、そうそうウマい話が続くわけがなく、掛かったのは手のひらサイズのヒラメの幼魚(^^;
キープサイズのアタリは遠い。

2023060602
下心マンマンの、下品な平日午後釣行。
しかし、釣果は上品。
キープサイズは2枚。

16時30分、沖上がり。

| コメント (2)

2023年6月 4日 (日)

竿を曲げたのは やはり外道

雨が上がった。

ヤマセ(東風)が、昼には西からの強い風に変わる予報、
なのに、朝いちモタモタ。
で、8時、出航。

2023060401
今日の出竿は、こんな風景の見える海域。

一昨日だったか、先週末だったのかは聞きそびれた。
が、この海域で竿を出すと1人2ケタのヒラメが掛かったと。
何人乗ってたのか、船中70枚掛けた艇もあったらしい。

オカから沖へと船が流れ、時折 竿が曲がる。

一昨日のことは、一昨日のこと。
先週末のことは、先週末のこと。
今日 竿を曲げるのは、ギスカジカばかり(^^;

風が止まり、やがて沖へと船を押していた風が、オカへと押す風に変わった。
正午、沖上がり。

2023060402
沖上がりの直前。
竿を曲げたのは やはり外道。
マツカワ。

| コメント (6)

2023年5月28日 (日)

むこうの海域へ

穏やかに夜が明けた。

今日の日出は、4時04分。
4時30分、出航。

アッチでもなく、コッチでもなく、むこうの海域へ。

2023052801
今日の出竿は、こんな風景の見える海域。
誘導してくれたのは、画像の艇、Sea Dragon3
サンクス。

船をオカへと流す風。

8メートルから流す。
アタルのは、6メートル。
その水深、ヒラメのほかにイシモチとギスもいて、アタリは多い。

が、目的魚のヒラメは なかなかハリ掛かりしない(^^;

2023052802
Sea Dragon3では良カタがあがったようだが、我が艇ではアオッパサイズのみ。
リリース 2尾。

左の2尾はイシモチ。
左ヒラメの右カレイ。

| コメント (6)

«アッチでスカ(^^; コッチでもスカ(^^;