度は長さ、量は体積、衡は質量。
秦の始皇帝による度量衡の統一は紀元前3世紀。
日本での度量衡の統一は、8世紀の大宝律令、16世紀の太閤検地がエポック。
古代バビロニアでは、紀元前40世紀には整然とした度量衡が定められていたらしい。
近代以降、質量は長いこと、最大密度温度(4℃)の1リットルの水を1キログラムと定め、その1キログラムの分銅を国際キログラム原器としてパリで保管してきた。
複製が40個あり、うち1個は工業技術院計量研究所(現:産業技術総合研究所)に保管されている。
2019年、質量をキログラム原器で定義せずに、
プランク定数を 6.62607015×10-23 ジュール秒と
することで定める
と定義し直されることになった。
プランク定数は実験的求められるが、これはアボガドロ定数と反比例の関係にあることが分かっている。
だから、質量を定義するにあたっては、プランク定数を使わず、アボガドロ数を使っても定義できることになる。
工業技術院計量研究所には、不純物のごく少ない直径94mmのシリコンの単結晶の球がある。
上記した理由から、質量をキログラム原器という人工物から離れて定義するには、アボガドロ数の精密な値が必要。
それをこのシリコン球を使って求めようと作られたもの。
以下、高校物理・化学の範囲を越えるプランク定数には触れない。
なお、アボガドロ数の単位は 個数で、無名数。
アボガドロ定数の単位は、個数/モル で、表記は /モル 。
ここでは区別せずに、すべてアボガドロ数として記述する。
(数値は同じ)

こんな飯屋で読み始め。
アボガドロは、18世紀から19世紀にかけて生きたイタリア人。
16歳で法学士、20歳で法学博士号を取得し、弁護士として人生をスタートさせている。
数学や物理学に手を染め出したのは、24歳になってから。
で、33歳で自然科学の教授職に就いている。
アボガドロ自身は、アボガドロ数の決定には関与していない。
アボガドロが唱えたのは、
同一圧力
同一温度
同一体積
の気体には、気体の種類を問わず、
同じ数の分子が含まれる
というもの(アボガドロの法則)。
アボガドロ、35歳の時の論文。
1811年のこと。
本夕、読了。
分子の存在の理論的証明は、アインシュタインによるブラウン運動の理論の発表まで待たねばならず、それは20世紀に入ってからのこと。
ことほどさように、アボガドロの考え方は時代に先んじていたために、同時代人には理解されることはなかった。
彼の論文が日の目を見るのは、1860年。
彼の死後、4年が過ぎてから。
さて、工業技術院計量研究所でシリコン球を使って求めようとしたアボガドロ数。
6.022140×1023
から、精度を100倍上げた
6.02214076×1023
に到達するまでに、10年を要している。
現時点の技術では、小数点以下10桁あたりが測定限界。
4年ごとにパリで開催される国際度量衡総会は、現代の太閤検地みたいなもの。
2018年の第26回総会で決議したものの内のひとつは、質量を定義し直したと同時に、
アボガドロ数の値を小数点以下8桁までで打ち切り、それを
アボガドロ数の定義値とする
というもの。
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